5.でん部痛
Hさん 58歳 女性 主婦
主訴:腰痛
Hさんが腰痛を訴えて来院されました。
部位を確認すると、腰に両手を当てる体勢(前にならえの先頭の人の体勢)を取ったときに、両手の親指が触れる位置(腸骨稜:いわゆる腰骨)から三、四センチ下、つまり腰というよりもお尻の上の方の部分(上臀部)、それもほぼ左右対称の位置であった。
痛みは左側だけが出ていたり、右側だけだったり、両方だったりするとのこと。
来院時には両側に出ていた。
下肢への放散痛はない。
ちょうどこの部位は、「小野寺圧痛点」と呼ばれる胃、十二指腸に異変があるとその反射が出るとされている部位であり、筋肉であれば「中臀筋(ちゅうでんきん)」に相当する部位であった。
そしてこの中臀筋は主に第4、5腰椎から出ている神経(上殿神経)の支配を受けているが、その第4腰椎には変位(骨のズレ)が確認できた。下肢神経学検査に異常は認められない。
まず胃・十二指腸を中心とする消化器系に内臓整体を試みる。
この段階で確認を取ると、左側臀部の圧痛はほぼ消失していたが、右側にはさほど変化はみられない。
そこで変位の確認が取れていた第4腰椎に矯正を試みたところ、右側の臀部痛もほぼ解消された。
あくまで推測の域を出ませんが、ほぼ左右対称の位置に症状の出ていた臀部痛ではありますが、
左側は内臓の機能低下が原因となって、神経を介しその反射点(小野寺圧痛点)に生じたもの、
右側は第4腰椎の変位(骨のズレ)が原因となって、第4腰椎から出る上殿神経の狭窄を招き、その上殿神経によって支配される中臀筋に生じたものと、
左右それぞれが違う原因によって臀部痛を生じていたのでは、と考えられます。
施術から二週間経った現在、症状の再発はないとのことです。
参考 : 『最新医学大辞典 第2版』 医歯薬出版
『カイロプラクティック・マネジメント』 エンタプライズ
(Hさんの許可を得て掲載)